――ガサッ……ゴソッ
自室の中央から、衣擦れの音が聞こえた。
あ、起きた。
書類をデスクに置き、イスから立ち上がる。
部屋の中央にあるベッドの上に腰を下ろし、シーツをかぶり……モゾモゾと動いているヤツを見つめた。
「眠れたか?」
シーツの上から、頭部があるであろう場所を優しくなでる。
俺の声に反応したヤツは、ゆっくりとシーツから顔を出した。
『り……く……』
口パクだが、俺の名前を口にする。
昼寝していた杏の髪は、シーツとの摩擦でボサボサ。
まだ寝ぼけているのか、目はトロンとしていた。
「まだ眠たいか? 2時だし……」
部屋の時計を見ながら言うと、杏は俺に両手を伸ばしてくる。
抱っこして、ってことだな。
――グイッ
杏の体を抱きおこし、自分の膝の上に向かい合うように足をまたがせて乗せた。