「杏樹が笑ったのは、柚莉ちゃんの前が初めてじゃない」 「え………?」 「柚莉ちゃんに出会う…ずっと前に、一度だけ笑ったんだ」 「いつ…?」 樹里は知らなかったという表情だ。 「……杏樹を幼い頃に一度だけ、パーティーに連れて行ったことがあっただろう?」 「えぇ……」 「その時だったんだ……初めて笑った杏樹を見たのは」 妻の樹里も知らなかった話を始めた。