――ピンポーン

杏の家の前に着き、インターホンを鳴らす。


≪はーい。今行かせるわね!≫

お袋さんの声がして、ものの1分ほどで杏が屋敷の門まで出てきた。


口パクだが、『お待たせ!』といっている。



だが、俺は……杏の装いに、見とれていた。



理由は。


クリーム色の生地をベースに、様々な花が描かれた……振り袖姿だから。


長い黒髪も結い上げてある。



キレイすぎて、言葉が出ない。


人間、本当にキレイなものを見ると、黙ってしまうらしい……今がそうだ。



若干、口を開けたまま、彼女の姿を眺めていると。



『どうかしたの?』と、杏がホワイトボードに書いて問いかけてくる。




「いや、なんでもない……行くか」




ハッとして我に返り、彼女の手を引いて神社の方へと向かった。