神崎杏樹って言ったら、学園内では有名人。

だって……先パイと同じように頭脳明晰で、運動神経も良くて、学園イチの美女なんだもん。

おまけに、スタイルも良くて、クラスの男子の話じゃ……Dカップ以上はあるらしいし……。


ファンクラブだってあるくらいだし、男子からの人気はすごい。

天才の先パイに、唯一張り合える存在だって言われてる。


そんな人が、先パイの彼女?


なによ。

そんな女なんて、ただ顔と体がちょっと人よりいいから色仕掛けで先パイに迫ったのよ。

先パイは優しいから……その女を断りきれなくて、ムリやり付き合ってるのよ!!


彼女がいるだなんて信じたくなくて、みんなの話を耳に入れないようにしていた。


でも、先パイと彼女が一緒にいるところを見た子たちは少なくて……噂に過ぎなかったのかもと思っていた。



そんな6月のある日。

テレビのニュースで梅雨入りが発表されて、間もない日だった。



梅雨の時期には珍しく、その日は晴れだと天気予報は言っていたんだ。


朝からも、キレイに晴れていたし、雨なんか降る様子はない。

でも、心配だった私は、折り畳みの傘を持っていくことにした。



そして、予感は的中。


昼休みのチャイムが鳴った途端、


――ザアアアアアア……


バケツに入っていた水をひっくり返したような土砂降りの雨。


「え~~!? 傘持って来てないよ~~」


クラスメイトのそんな声を聞きつつ、内心ほっとしていた。


よかった、持って来て……。