でも、ちょっと待て。

つーか。


「杏ちゃん? この俺にバカって何回言った?」

「さ、3回……?」


お前が俺にバカというには早い。

ちょっとムカつくから、お仕置きするか。

「り、陸……離してっ!」

俺の心の中を読んだかのように、杏がバタバタと腕の中で暴れ出した。


「ダメですね~杏ちゃん。バカって言った分、俺に尽くしてもらうから」

「ギャアアアアア~~!! 離してよ、このバカッ!!」

「あ、また言った……1回分追加な? 今日は、もう授業には出れないと思え」

――クイッ

杏の顎を指で掴み、自分の方に向けさせる。

バカって言われたこともあるが、あんなかわいいこと言われて、俺が我慢できると思うか?

んなの、ムリに決まってんだろーが。


「キャアアア! なんであたしのネクタイ解いているの!?」

「ん? 杏ちゃんの手を縛るため。たまにはこういうのも燃えねぇ?」


ネクタイの結び目に指を引っかけて解き、クルクルと杏の両手首に巻きつけた。

まぁ、まだもうちょっとは養護教諭も来ねーだろ。

この部屋に窓はあるが、雨が降っているし、外から様子を覗かれることもない。

だから……。


「ギャアアアア!! この変態閻魔大王がァっっ!」


そんな声が、シャワー室内に響きつつも、その後、杏ちゃんをいただきました。


やはり思った通り。

雨音のおかげで、誰にもバレることはなかった。


「な、もっと妬いてくれてもいいぞ?」

「バッカじゃないの!?」

「あ、バカって言った。はい、もう1回な?」


杏の『バカ』という言葉が、『陸大好き』に聞こえるのは、俺の耳がおかしいわけじゃないと思う。



――END――