俺にもファンクラブというものが存在していて、常に女たちが取り巻く。

杏とふたりっきりになれるのは、西棟での昼休みと、放課後のみ。

それ以外は、学園の女たちに囲まれた生活を送っていると言っても過言ではない。


なのに、アイツは……俺に対して一切妬かない。

俺は、杏のまわりに男がいるだけでもイライラするというのに、だ。

頭脳明晰な杏には、勉強を教えてほしいという名目でよく男が近づく。

男女どちらかと言えば、女の方が数は多いとは思うが……かぐや姫とお近づきになりたいと願う男は少なくない。


杏本人は、男たちの熱い視線にも全く気付かないので、警戒心というものはゼロ。

アイツが、男だと意識をしているのは俺ぐらいだろう。


『どこの誰が、こんな地味女子に興味を持つの?』


それが杏の口癖。

まわりの男どもが考えていることなど、考えたこともない。



そんな杏なのだが、これまで……妬いているというところを見たことがほぼないに等しい。

つーか、彼女のまわりからも聞いたことがない。


俺がファンクラブの女に囲まれようが、他校生からコクられようが。



アイツは――――少しも表情を変えない。