自分の気持ちに自覚したのは、創立祭で社交ダンスを踊る際、まったく踊れなかったアイツが、“閻魔大王”に教えてもらって踊れるようになった時。

閻魔大王が誰なのかと聞くと、『あたしの大切な人』と答えた吉川。

同時に、俺の中にムカムカと言葉では表しにくい感情が出てきて、これが嫉妬なのだとのちに気付いた。

その時に見た、吉川の首から下げてある男物のネックレス。

彼氏はいないと言っていたのに、うっすらと見えた男の影。


そして、この時こそ、本当に吉川が欲しいと思った。


だから、俺のじいさんのパーティーで、吉川を紹介した。

だけど、じいさんは『お前には観察力が足りない』などと言って、意味深に笑うだけで。


また、そこで出会ったのが、松沢学園で帝と呼ばれる存在であり、悠の幼なじみの滝本陸。

悠からの話は時々聞いてはいたが、本当に一般人でここまで整った顔立ちの男がいるのかと思った。


温厚で、紳士的。


俺が陸に抱いた第一印象はそれだった。


その頃から、吉川への男の影が濃くなってくる。

朝帰りをしたり、男物のネックレスをつけていたりと、彼氏らしきヤツがいるのかと考え始めた時。


あの事件が起きた。


夜中に外へ出かけ、何者かに襲われてケガを負った。

その晩はそうでもなかったが、翌日高熱を出して学園内で倒れ、病院へ。



その日、学園に来るのは吉川の親だと思っていたのだが、病室に現れたのは、パーティーで会った滝本陸。