しかし。

彼氏である陸が、杏樹の居場所がわからないというのに、果たして俺が見つけられるのか?

もうすでに、電話を切ってから15分が経過している。

次に講義があるため、構内にはいるだろうが、この広い大学内で見つけるのは大変だ。

「ハァ……」

どうするかと考えていた時だった。


「あ……」

高校の時のことを思い出す。

あそこかも知れない。

あまり信じてはいなかったが、行ってみることにした。


その場所とは……。


――サクッ……

太陽に照らされて、輝く黄緑色の芝生。

周りには高さ1メートルくらいの木々が所どころに植えてあり、ほどよく日陰を作っている。

そして、頭上から聞こえてくるのは、規則正しい時間を刻む音。

ここは、大学内にある時計塔の下だ。


「杏樹?」


名前を呼んでみるが、返事はない。

だが。


「ん……」


1テンポ遅れて、声が聞こえた。

やっぱりか。

――カサッ

木々の葉をかき分けて、芝生にいるであろう女の顔を見る。

そこにいたのは、芝生の上に横向きになってスヤスヤと寝ている杏樹。

俺の予想が当たったわけだ。

まさか、大学でもここで寝るとは思わなかったが。

「ったく。このメガネ女」

芝生の中に足を踏み入れて、杏樹の傍まで行く。

「おい、起きろ」

一応声はかけてみるが、起きない。
爆睡中だ……。

ホント、コイツは大学生になっても、高校の時と変わらない。

あの時と同じように寝ている杏樹を見て、高3の時、初めてコイツに出会った時のことを思い出した。