そして、今―――。

高2の3月。

春休み。


杏が作った昼メシを食べた午後。


「おい杏、DVD見るんじゃなかったのか?」

「んぅぅ~~……」


ソファーに座った俺の足の間に、杏がちょこんと座っていた。

『ミステリー映画のDVDが見たい』といったから、再生をしたというのに。

コイツは、眠そうに眼をこすっている。


「眠たいわけ?」

「う~ん……」

「じゃ、昼寝するか?」

「うん」


すでにウトウトしている彼女を抱きかかえて、ベッドに運んだ。

相変わらず、体重は軽い。

食べたモノの栄養は、頭と胸にしか言ってないような気がする。

最近シてねーけど、抱き心地が、さらによくなっているように感じた。


ベッドに下ろすと、俺の服を引っ張ってくる。

これは、一緒にいてという合図。


「はいはい……」


まったくガキだ。

ベッドに潜り込むとすり寄ってくる杏。

すでに夢の中だった。


コイツの髪を撫でながら、2時間程過ごしていた頃。


「んぅぅ……」

「起きたのか?」

「陸……」


杏が目を覚ました。

パチパチと瞬きをして、俺を見上げてくる。


「どうした?」


柔らかい頬を撫でながら、問いかけた。

その瞬間。

――ちゅっ

唇にやわらかいモノが……。

しかし、それは一瞬で離れる。

だが逆に、ギューッと抱き着かれた。


「う~ん、なんかね、陸にくっつきたくなったから」


そう返ってきた答え。

えへへと笑う彼女に、理性を壊される。


天然で。

最強というくらいに鈍感で。

恐ろしいほどに無自覚。

しかし、俺の霊力に対しての初めて出会った理解者。


みつ編みの地味子。



そんな彼女に、俺は今日も夢中にされるんだ。




ーENDー