「滝本くん、体調大丈夫?保健室で休んでたんでしょう?」


――きゅっ

俺の制服の袖を握りながら、上目遣いで話す中原。

あぁ。保健室にはいたさ。

ただ、養護教諭で欲を満たしていただけ。


「うん、もう大丈夫だよ」


ホントのことは言えないので、ニコリと笑って返す。


「本当?愛心配だったんだぁ~」


ニッコリと笑みを浮かべて、そう言う女。

このぶりっ子。

近寄んな、吐き気がする。


中原は、本当に心配していたという顔をするが、俺は知っていた。


以前。

学校が終わり、放課後。

職員室に呼び出されていた俺は、他のヤツらよりも帰るのが遅くなった。

特に急ぐこともないので、ゆっくりとした足取りで教室に戻った。


その時。


「愛は、やっぱり滝本くんかな!」


中原の声が聞こえた。

男たちの前での口調と違うし。

一旦、足を止める。


「うっそ~愛も滝本くん狙いなのぉ?敵わないじゃ~ん」


そいつの取り巻きの声も聞こえた。


「だってさ?滝本くんを彼氏にできたら、自慢だよ?あんなにイイ男っていないし!」

「だよね~。みんなが好きな王子様だもん、手に入れたら愛の価値が上がるよね?」


中原と、取り巻きの会話。

ホント笑える。

いつだって、俺をちゃんと見てくれるヤツなんていない。

容姿。

家柄。

女たちが見ているのは、俺のそれだけだ。