今は休み時間のようで、廊下には同級生の女たちがうじゃうじゃといる。

俺を見れば、必ず一言。


「陸様だよっ!かっこいい~!」

「滝本くんこそ、本当の王子様だよね!」

「彼女になりた~い」


どこからともなく、そんな声が聞こえてくるんだ。


ホント、笑える。

女たちは、なんにも俺のことをわかってない。


“本当の王子様”?


笑わせんな。

そんなのこの世で要領よく生きていくための仮面だ。


女たちに『滝本陸ってどんなヤツ?』と聞いたら、

「優しい!」

なんて答えられるだろう。


でも、実際はまったく違う。

女どもに優しさなんて、微塵も思ってない。

心の中では、毎日毒ばかり吐いている。

所詮、女たちは外面しか見ない。

それが、イヤで仕方がないんだ。



教室に入る。

一斉に、クラスの女たちの視線を感じた。


すると。

――パタパタ……


「滝本くん!」


ひとりの女が近寄ってくる。


「中原さん?」


男たちの中でも、校内1かわいいと言われている中原愛(なかはら あい)。


なんか用かよ。


そう思いつつも、顔には笑顔を張り付けた。