「ちなみに映画はもう行ける?」

こうなる前に誘って断られた映画。
友達とは行けないってなかなか行くって言わなくて…。

「…ん。」

「ん?」

「…うん。逃げないように努力する。」

「はいはい。じゃ時間見てまた連絡するね。」

「うん。」


まったく…。

いつもバイトじゃキリキリハキハキしてるのに…。
違う顔。

「なんだか重樹ちゃんに勝てる気がしない…」

さらに若干膨れながら付け足して言ってる。
ホントに全然違う。

「勝てる気がしないとか素直だなぁ、なんかかわいーなぁ。」

「…うざっ!!」

「かわいーって言ったのにうざっとか言うな。」

コツン。
と朱香の頭を小突く。

「…だって。」

朱香は耳まで真っ赤。
しかも口ごもってる。
…イジメ過ぎたかな?

「はいはい。それじゃぁ俺まだ学校行って薄片作らなきゃならんから、また後でメールするよ。」

「あ…はぁい…。」

ちょっと残念そうな声の朱香を残してエンジンをかける。

俺だって残念なんだけど。

「じゃぁね。」

「はーい。」