ピー…
ケトルがけたたましく鳴って、現実へと引き戻される。
カチッ
慌ててコンロの火を消して、沸騰したてのお湯をマグカップへ注ぐと、コーヒーの匂いが広がる。
「お待たせ」
二つのマグカップと、ミルクと砂糖をテーブルに乗せた。
「あれー?このマグ、もしかして旦那様とペアぁ?」
冷やかす様に、メグはわたしのマグカップを指差した。
メグにはピンクのマグカップ、わたしには水色のマグカップ。
「そーよっ」
旦那様…
お揃いのマグカップ…
段ボールばかりが置いてある、殺風景な部屋…。
わたしはもうすぐ結婚する。
雅人にあのとき言った、“好きな人”と−…。
「いいなぁ、由紀が羨ましいよぉ」
「メグ彼氏は?」
「別れたぁ」
「また?」
「うん」
ため息をつきながら、メグはミルクと砂糖で甘くしたコーヒーを、口にする。
メグには本気で好きな人が居る。
だけど、なかなか上手くいかなくて、他の人と付き合ったりしてるみたいだ。



