「他に…好きな人が出来た…」
怒られても、軽蔑されても、嘘はつけない。
「…分かった」
雅人の静かに言う声が聞こえ、
はっと顔を上げると、
「長い間、ありがとう」
怒るわけでもなく、悲しむわけでもなく…雅人は穏やかな顔で笑っていた。
「ありが…とう…」
何故だろう、フったのはわたしの方のはずなのに…
わたしの顔が歪む。
「じゃあ」
机の上に置かれていたレシートを持って、雅人は立ち上がった。
「…っ」
一瞬、追い掛けようとしたのに、追い掛けられなかったのは、
追い掛ければ、雅人をもっと傷つけることになるから…。
この日、初めて“恋愛”で泣いた。
この日、初めて雅人がわたしのことを、どれだけ真剣に思ってくれていたか知った。
お調子者で、デリカシーのない奴だけど、わたしのことは…人一倍大切にしてくれていたんだ。



