しばらくして、苺は西藤くんに見つけられた。
雅人は苺に謝っていたけれど、
少し気になっていただけに、わたしは彼を許すことが出来なかった。
それから、メールをすることも、話をすることもなくなり…
この恋は、終わったかに見えた。
だけど、2年生になったある日…
「中野」
廊下で声をかけられた。
振り向くと、そこに居たのは雅人。
クラスが変わって、久しぶりに見る姿…坊主頭は相変わらずで、野球を頑張っているのが、見て取れる。
「ちょっといい?」
「…」
少し迷った末、頷いた。
風の当たる中庭で、雅人は口を開いた。
「津田さんのことはごめん。ホントひどいこと言ったって、反省してる」
“津田さん”とは、苺のこと。
「謝ったんでしょ?だったらもういいじゃん。わたしに謝ることじゃないと思うけど」
「待って」
教室へ戻ろうとしたわたしの腕を、雅人は掴んで止めた。
「俺…今も中野が好きだから、中野に許してもらいたいんだ」
お調子者の雅人は、いつにもない真剣な目で、わたしを見つめる。
サァー…っと風が吹いた。



