『ごめんね!来週付き合うからっ!…って、来週…だったっけ?』
まるで探るような、由紀ちゃんの声。
まだ3月。さすがに寒さを感じて、あたしは窓を閉めながら、壁に掛けたカレンダーを見た。
「うん」
来週の日曜日、ピンクのペンで囲ってある。
いよいよ来週…。
『そっか、じゃあまた今度付き合うから!それより、早く帰ってくればいいのにね』
「うん…でも、荷物まとめたりとか大変なんだよ」
あたしは苦笑しながら答えた。
『苺は会いたいでしょ?早く会いたいでしょ?』
「~…もーっ!」
来週だからって、からかう由紀ちゃん。
こんなことで顔が赤くなってしまうあたしは、まだ子供だろうか。
「そんなこと言ってないで、行かないといけないんじゃないの?打ち合わせなんでしょ?」
『…あ、そう?……え?ごめん何?苺』
受話器から聞こえた由紀ちゃんの声は、他の誰かと喋ってるみたいだった。
「誰か居るの?」
『あっ…ちょっとね。ごめん、そろそろ切るね?』
あぁ…そういうことか。
「もう彼氏と居るんならそう言えばいいのに。分かった、じゃあね♪」
『ごめんね、じゃあねっ!』
あれ…?
電話を切ろうとしたその時、由紀ちゃんの声の後ろで、笑い声が聞こえた気がした。
その声は、メグちゃん-…?



