急に離されて、あたしは不安になったけど、
「泣き虫」
裕くんは一言言って、指であたしの涙を拭ってくれた。
裕くんの指は、肌に冷たい…。
拭われたって、すぐに涙が浮かんでくるあたしは、本当に泣き虫だ。
そんな様子を見て、裕くんは微笑むように静かに笑った。
笑える裕くんは…強いよ…。
「苺…手貸して」
「手…?」
あたしが右手を出すと、裕くんは苦笑しながら、手をはたいてくれた。
「あっ、ありがとう」
チョークの粉が、付いてたみたい。
「こっち」
右手を離して、裕くんは片手であたしの左手を取った。
もう片方の手は、ポケットの中から何かを取り出して…
「俺も苺が好き」
言葉と同時に、薬指に何かが当たる…。
あたしの指に、すんなりとはまったそれは…
「ゆび…わ…?」
「そう、ペアリング。クリスマスに…何もやれなかったから」
「っ-…」
あたしは驚いて、声が出ない。
ただ、それを見つめる。
あたしの薬指で、銀色のシンプルなリングはキラキラと輝いて…。
感無量って、きっと今使う言葉。
驚いたせいで、涙も止まってた。
リングには、何か文字が彫ってある…。
あたしはそれを見た。



