「…黒板消してたんだよな」
それは、苺と初めて言葉を交わした日のこと…。
思えばあれが、苺との出会いだった。
「手伝ってくれたよね」
苺はこっちを見て笑う。
「俺が来なかったら、ずっとやってた?」
「そんなにバカじゃないよっ!」
今度は頬を膨らます。
初めはただ、“小さいクラスメイト”としか、思ってなかった。
黒板消しを手伝ったのだって、特に意味はない。
だけど、あの日をきっかけに惹かれていったんだ…。
明るい笑顔、
からかうと膨れる顔、
照れると赤くなって、
そして涙-…。
いつの間にか、そんな表情の全てが、愛しくなっていた。
この恋が始まった場所だから、苺と二人でここに来たかったんだ…
……最後に。
「…裕くん」
教室を見つめていた苺が、ゆっくりと口を開く。
「裕くんが…大学選んだ理由って何…?」
「…」
それは今まで苺が、聞くことのなかった質問だった。



