ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*

♪苺side♪


あたしは階段を一歩一歩、踏み締めるように上がる。

教室に裕くんの姿はなくて…
その周りにも姿はなくて…

きっと、ここに居るんだと思った。


ギィ…

相変わらず重たいドアを開けると、

肌に冷たい空気と、
目を射すような明るい光…。

そして、

「やっと来た」

大好きな、心地よい声が聞こえた。

声だけで分かるけど、目でも確認する。

やっぱり屋上に居たんだ…。

分かった自分に嬉しくなって、自然と笑顔になる。

「裕くん、遅くなってごめんねっ!」

あたしは小走りで、側に駆け寄った。

「あ…」
「どうした?」

近寄って、すぐに気付く。

裕くんの上着には…ボタンが全部ない。
それどころか、ネクタイまでない。

分かってたことだけど…
やっぱり嫌だ…。

他の人が、裕くんの物を持っているなんて…。

「何でもない」

自分の気持ちを押し殺して言うけど、すぐバレてしまったみたい。

「これ?」

裕くんは、ボタンの付いていたであろう部分の、近くを掴んで言った。