「苺、おはよっ!」
ポンッと肩を、誰かが軽く叩く。
それが誰かは、振り向かなくても分かる。
「おはよう、由紀ちゃん」
挨拶を返して、あたし達は並んで歩く。
「早いねー。わたし全然、実感わかないんだけど」
「うん、あたしも」
二人して苦笑する。
確かに、あまり実感はない。
まだ明日も明後日も…ずっと、この道を通る気がしてならない。
でも、明日からは通らない。
明日からは、高校生じゃない。
それが現実…。
「この前入学したばっかな気がするのにさ、この調子ですぐ、おばさんになりそうっ!」
由紀ちゃんの言葉に、あたしは笑う。
「苺はいいよね!絶対若く見られるもん」
「あの…それが悩みなんですが…」
言うと由紀ちゃんは、あたしの頭を撫でた。
「でも苺、成長したと思うよ」
「身長伸びてないよ…?」
真面目に答えたのに、由紀ちゃんは笑う。
「身長じゃなくて内面!」
「内面…?」
「うん、何て言うか…苺、大人っぽくなったよね」
“大人っぽくなった”
言われて悪い気はしなくて、恥ずかしくて赤くなる。
身体的な成長は、中学の頃で止まってしまったから、高校に入って、大人っぽくなったというのなら…
それはやっぱり…
あの人に出会ったから−…?



