「ねぇ、マジで何もなかったわけ?」
大和がしつこく聞いてくる。
「あぁ」
俺は答えながら、中野と間に挟まれて、話をしている苺を見た。
赤く頬を染めて、困った表情をしている。
きっと内容は、こっちと似たものなんだろう。
「マジかぁ…」
「お前らが勝手にやったことだろ」
言うと、何故か大和は落ちこんだ表情を見せた。
そういえば…昨日怒っていたはずなのに、今朝は普通に話してくる。
大和は昔から喧嘩しても、1日過ぎれば忘れてしまうっけ。
それが良い所かもしれない。
「どこ行くんだよ?」
足を進めかけた俺を、大和が引き止めた。
「外、朝の空気吸いに」
また足を進めようとしたが、止まる。
「大和…」
言い忘れていた。
「ありがとう」
大和が居たから、苺と仲直りすることが出来た。
居なかったら…連れてきてくれなかったら、今もきっと苺とは上手くいってなかっただろう。
なかなか素直に言えないけど、今日は言えた。
大和は照れたように、でも嬉しそうに笑った。
苺の方をもう一度見ると、苺も笑っていた。
俺も自然と笑顔になる…。
前へ進もう。
応援してくれる人に、感謝しながら。



