「考え直すも何も…ね」
あたしは二人に、笑顔を向ける。
「連絡とかないわけ?」
「うん…」
電話もメールも、一切なかった。
それはつまり、裕くんが別れを承諾したってこと。
何かを期待していたのか、最初は悲しかったけど、今思えば…それが裕くんの、優しさだったのかもしれない。
「西藤くんは何やってるんだよっ!」
少しブラックの入ったメグちゃんが、腕組みをして吐き捨てた。
「多分…受験とか忙しいんだよ。それに、あたしはこのままでいいし…」
「苺、王子と別れたのって、本当にすれ違い…?」
すれ違い…。
それは由紀ちゃんとメグちゃんに、裕くんが遠くの大学に行くことを、言えなくてついた嘘。
由紀ちゃんは結構鋭いから、何か気付いたのかもしれない。
でも、嘘であって、嘘じゃないと思うから…。
「うん」
あたしは頷いた。
「でも…苺ちん」
「二人ともありがとう。でも、もういいの。ちょっと風に当たってくるね」
もう一度笑って、あたしは逃げるように教室を出た。
「わたし達、余計なこと言ったかな…」
「かもしれないけど、やっぱり苺ちんには幸せになって欲しいよぅ…」
「だね…」
由紀ちゃんとメグちゃんは、あたしの背中を見つめながら呟いた。



