ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*


「…わかった」

俺も立ち止まる。

「苺…」
「裕くん、頑張ってね!…じゃあねっ」

俺の言葉を遮るかのように、苺は手を軽く振ると、少し駆け足で去って行った。
まるで、逃げるように…。

その姿に少し、寂しさを感じた。

何か言葉を見つけたのかと言えば、見つかってはいない。

だけど、名前を呼んだのは、“何か”を伝えたかったから…。


苺が見えなくなっても、俺はしばらくそこに立っていた。

苺が戻ってくるなんて思わなかったし、苺を追いかけようとも思わなかったけど、何となく動けなかった。

歩けばまた、前に進んでしまうから…。


「あ…」

そういえば今日は、袖を引っ張られなかった。

“手を繋いで”

そんな、苺からのかわいいサイン。

最近は一緒に帰っていなかったから、しばらく手も繋いでいない…。

苺の手の温もり、感触を思い出そうとしたけど、

どうしてか、思い出せなかったんだ−…。