ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*


「帰んの…?」

それを言うのが、精一杯だった。

「うんっ、邪魔しちゃ悪いし…」
「でも、何か話あったんじゃねぇの?」
「あ、うん。最近忙しそうだったから、どうしたのかなって思って…。理由分かったから、大丈夫」
「そっか…」
「じゃあっ…」

部屋を出ようとした苺の腕を、俺は無意識のうちに掴んでいた。

「裕くん…?」
「…送るよ」
「えっ、一人で大丈夫だよ?」

ニコニコと苺は笑顔で、

また…痛い…。

「いいから」

俺は苺の前を、歩き出す。

「うん…」

苺は静かに頷いた。



歩きながら、言葉を交わすことはなかった。

何を言ったらいいのか、分からなくて…。
何も言えなくて…。

泣いたり、怒ってくれれば、きっと何か言葉が出てきたのだろう。

だけど、苺を見るとニコニコ笑ってばかりで…。

言葉は出て来なかった。

そんな苺からも、特に言葉は出て来なかった…。


「ここでいいよ?」

一緒に帰る時、いつも別れる場所で、苺は立ち止まった。