「ふーん、そうなんだぁ♪」
笑うメグちゃん。
あたしは…笑えない。
胸に引っ掛かってる、何かが苦しい。
「苺?」
「苺ちん、受け取らないのぉ?」
「あ…」
前を見ると、裕くんがあたしに、教科書を差し出してくれていた。
「…ありがとう」
受け取って、笑って見せる。
普通に振る舞わなきゃ…。
「じゃあね」
そのまま、あたしは教室の中に入ろうとした…けど、
「待って、話がある」
裕くんが、腕を掴んで引き止める。
ダメだよ…。
メグちゃんが…見てる。
「ごめん、授業始まるから…また後から」
「…分かった」
裕くんは微笑んで、あたしを掴んだ手を、ゆっくりと下ろす。
「じゃあ、後からな」
あたしが頷くと、自分の教室へと戻って行った。
最近あまり話せてない…。
お昼も一緒に食べてない…。
メグちゃんの視線が気になって…メグちゃんの前で、裕くんと居ることを、必要以上に避けている。
ごめんね…。
「あれ?苺、いいの?」
何も知らない由紀ちゃん。
「うん」
だって…嫌われたくない。
メグちゃんの方を見ると、何も言わず、教室に入って行った。
メグちゃんを嫌いになれたら…裕くんは渡さないって、対抗意識を持てたら…どんなに楽だろう。
でも、あたしはメグちゃんに、嫌われたくない。
仲直りしたい。
無くしたくない。
だって、メグちゃんは、
大切な“友達”だから…。
思っているのに、改善策は見つからなくて、距離は広がる。
メグちゃんとあたしの距離…
そして−…。



