少し落ち着いてから、あたしは翔くんの教室を訪ねた。
すっかり遅くなっちゃったから、もう居ないかな…?
ドアからそっと、控えめに中を覗く。
やっぱり…翔くんの姿は、教室にはない。
メールしとけば良かったな…。
そう思いながら、諦めて帰ろうとした…けど、
「あのっ」
声がして振り向くと、背の高い女の子。
髪はポニーテールで、細くて、なんだか気の強そうな…。
「翔ですか?」
「あっ、はい」
「だったら体育館ですよ」
「えっ?」
「だから体育館に居ますから」
それだけ言うと、女の子はすぐに背中を向けて、教室に戻る。
「あっ、ありがとうございますっ!」
あたしの方が年上なはずなのに、敬語になっちゃった…。
でも、どうして体育館に…?
あたしは考えながら、そのまま体育館へと向かう。
校舎を出ると、風が冷たくて凍えてしまいそう。
早く体育館に行きたいのに、行きたくないような気もして、小走りになって…歩いて…を、繰り返す。
体育館には、翔くんが居る。
会ったら言わなくちゃならない。
それは、完全に翔くんを振るってこと…。
いつの間にか、着いてしまった体育館。重たい扉を、そーっと開けた。



