その日の放課後−…。
帰りの支度をしていると、思わぬ人があたしを訪ねて来た。
「苺ちゃん?」
名前を呼ばれて顔を上げると、そこに居たのは…。
え………?
自分の目を疑う。
だって…
「あ…西藤くんなら、あっちですよ?」
「ありがとう。でも、今日は苺ちゃんに、用事があって来たの」
「え…?」
藤堂先輩は穏やかに、微笑んで言った。
「ちょっと、教室出れるかな?」
「あ、はい」
あたしは椅子から立ち上がる…と、
「麗奈」
西藤くんが来て、藤堂先輩の腕を掴んだ。
「麗奈、津田に何の用?」
「何、裕ちゃん。ちょっと話がしたいだけ」
藤堂先輩は、西藤くんの手をゆっくり下ろす。
「麗奈」
「苺ちゃん、いいかな?」
「はいっ」
「苺ちゃんがいいって言ってるんだから、いいでしょ?」
「…」
西藤くんは黙り込んだ。
…?
「大丈夫よ、いじめたりしないから」
藤堂先輩は西藤くんに笑った。
藤堂先輩が、あたしに用なんて何だろうか…。
いじめたりする人じゃないことは、わかってるから怖くはない。
だけど、西藤くんが来たってことは、西藤くんに関わることって意味で…
不安にならずには、いられなかった。



