「ご、ごめんねっ!」
あたしは恥ずかしくて、西藤くんの顔を見ずに謝り、少し離れた場所へ走って、電話を取った。
「もしもし?」
『あっ、苺ちん?熱大丈夫ぅ?』
「うん、大丈夫…」
『苺ちんは今ホテルだよねぇ?じゃあわかんないかなぁ〜?』
「何?」
『自由行動、西藤くんと回ろうと思ったのに、居ないんだよねぇ…。他のクラスの子も探してたけど、やっぱり居ないみたいでさぁ?』
「へぇ…」
『苺ちんが知ってるわけないよねぇ?』
「うん…分かんない」
嘘を…ついた。
どうしてか、一緒に居ることを言えなかった。
『ありがとぉ、じゃあ先生にでも言ってみる。苺ちん、ごめんねぇ?』
「う、ううん」
『じゃあねぇ♪』
「バイバイ」
ドキン…ドキン…
まだ胸の鼓動は、止まらない。
「あの…西藤くん」
西藤くんの元へ戻ってから、やっぱり顔を見れずに話し掛けた。
「みんなが居る所に、戻ったほうがいいかも…。探してるみたい」
「…わかった」
西藤くんは静かに返事した。
歩きながらホテルに戻る最中、あたしも西藤くんも、一言も言葉を交わさなかった。
「じゃあ、戻るから」
ホテルに戻るなり、西藤くんが言った。
何故かあたしは寂しくて、きっと浮かない顔をしていたんだと思う。
「津田…」
名前を呼ばれて、顔を上げる。
「また後からな」
西藤くんは笑って、あたしの頭をポンポンと撫でた…。
その時、思ったんだ。
もしかしたら…もしかしたら西藤くんも、あたしのことを思ってくれてるかもしれない…って。



