「わぁ…すごーいっ!」
津田が声を上げる。
ホテルを出て、少し歩くと海岸があった。
「ちょっと行ってみる?」
「うんっ!」
津田は、とても嬉しそうに頷いた。
「きれーいっ!水が透き通ってるっ!こんなにきれいな海、見たことないっ!」
はしゃぐ津田…。
かわいいけど、体調が心配。
「病人がはしゃぐなって」
素直に「心配だから」と言えなくて、ぶっきらぼうに注意した。すると、
「ごっごめんなさい…」
少し落ち込んだ様子で、津田は謝る。
「や…無理すんなってこと」
「うん!」
慌ててフォローすると、今度はまた笑顔になった。
本当に忙しいやつだなぁ…。
「熱、大丈夫か?」
俺は津田の額に、手を当てる。
…と、津田の顔が、みるみる赤くなってゆく気がした。
「だっ大丈夫だよっ!ここっ座って、話しよっ!」
何故か焦る津田は、何となく可愛くて…笑う。
大丈夫というのは、嘘ではないのだろう。熱は下がっていた。
「だ…ダメ?」
「いいけど…砂付くよ?」
だってここは、波打ちぎわの砂浜。
「いいよっ」
それでも、座ろうとする津田の手を、掴んで止める。
「ちょっと待て」
俺は鞄を探る。
見学した所の資料に…
財布に、飲みかけのお茶のペットボトル…
あぁ、タオルがある。
俺はタオルを砂浜に敷いて、その横に座った。
「座って」
「えっ!悪いよっ!」
「いいから」
「でも…」
「もう置いたから座ってやって」
「…ありがとう」
津田も腰を下ろした。



