ちっちゃな彼女。*30センチ差のいちごな初恋*


「もしもし…」
『もしもし?苺先輩?』
「うん」
『どこにいんの?』
「教室の展示のところ」
『そっか。誰かと一緒?』
「うん、…友達と」

嘘じゃない。嘘じゃないのに、

『今から一緒に回ろうと思ったんだけど、じゃあその人も一緒に回る?』
「あ…ううんっ!ちょっと会って話してただけだからっ!」

何故かあたしは焦ってた。
翔くんとも西藤くんとも、どちらとも付き合っていないのだから、そんな必要ないのに…。

「あたし今からそっち行くよ!どこ?」
『マジで?じゃあ…玄関で待ってる』
「うん、分かった」

電話を切って、教室に入る。

「行く?」

教室に入るなり、西藤くんが言った。

電話…聞こえてたのかな。

「うん。ごめんね…」
「いや、俺こそ引き止めて悪かった」
「そんな事ないよ、話せて嬉しかった」

あたしは笑う。

「ありがと。…早く行かないとマズイんじゃねぇの?」

西藤くんも笑って言う。

本当は行きたくない…。
まだ、西藤くんと話し足りない…。

だけど、あたしが西藤くんと、ずっと一緒に居るのはおかしいこと…。

少しでも話せたことに、感謝しなくちゃ。

「じゃあ、またね」

あたしは重い一歩を踏み出して、教室を出た。

未練がましいけど、何度も何度も振り返りながら歩いた。


手には少しぬるくなった、甘いいちごオレ。

頭を駆け巡るは、“かわいい”という甘い言葉。


こんなにこんなに甘いのに、胸は苦しい。

この恋が甘くなるのはいつだろう−…?