「もしもし…」
『もしもし?苺先輩?』
「うん」
『どこにいんの?』
「教室の展示のところ」
『そっか。誰かと一緒?』
「うん、…友達と」
嘘じゃない。嘘じゃないのに、
『今から一緒に回ろうと思ったんだけど、じゃあその人も一緒に回る?』
「あ…ううんっ!ちょっと会って話してただけだからっ!」
何故かあたしは焦ってた。
翔くんとも西藤くんとも、どちらとも付き合っていないのだから、そんな必要ないのに…。
「あたし今からそっち行くよ!どこ?」
『マジで?じゃあ…玄関で待ってる』
「うん、分かった」
電話を切って、教室に入る。
「行く?」
教室に入るなり、西藤くんが言った。
電話…聞こえてたのかな。
「うん。ごめんね…」
「いや、俺こそ引き止めて悪かった」
「そんな事ないよ、話せて嬉しかった」
あたしは笑う。
「ありがと。…早く行かないとマズイんじゃねぇの?」
西藤くんも笑って言う。
本当は行きたくない…。
まだ、西藤くんと話し足りない…。
だけど、あたしが西藤くんと、ずっと一緒に居るのはおかしいこと…。
少しでも話せたことに、感謝しなくちゃ。
「じゃあ、またね」
あたしは重い一歩を踏み出して、教室を出た。
未練がましいけど、何度も何度も振り返りながら歩いた。
手には少しぬるくなった、甘いいちごオレ。
頭を駆け巡るは、“かわいい”という甘い言葉。
こんなにこんなに甘いのに、胸は苦しい。
この恋が甘くなるのはいつだろう−…?



