「麗奈の言う通り、男じゃないのかもな」
冗談混じりにそう言って、はぐらかすことしか出来なかった。
本当の事も、嘘も、言えない…。
「そろそろ帰るか?」
「そうだね…」
言いながら麗奈は立ち上がって、またベッドの上に上がり、時計と窓の外を交互に見た。
もう学校が終わった麗奈が帰宅しても、おかしくない時間。
「うん、帰る」
ベッドから降りて、床に置かれた荷物を持つ。
「じゃあ、裕ちゃんありがとう♪」
麗奈は笑って、手を振りながら出て行った。
「はぁ…」
俺はベッドに倒れ込む。
微かに麗奈の香りがする。
いい加減にしないと、本当に麗奈に気付かれる。
いや、麗奈は頭がいいから、もう感づいているかもしれない…。
どうして、麗奈を“好き”になれないのだろう。
昔は好きで好きでしょうがなかったのに。
今、“好き”なのは−…。
とても小さな女の子が、頭に浮かんだ。



