『ふーん。下界ってそんなにいいところなんだ。』

「お前、一回死んでるんだろ?それくらいわかってるだろ?」

『前の記憶は消えた。』

「消えた?」

『上で・・天国で暮らしてるといつの間にか記憶は消えるんだ。知らないうちにじわじわと。』


少し悲しげな顔をしたそいつは俺の顔に戻った。


『お前が死んだ。だから俺はお前が死んだことで開けられた穴を塞ぎに行くんだ。』

「穴?」

『そう、俺はお前の代わりに新しい命として生まれる。』

「命のサイクル・・。」

『そうとも言う。生まれた瞬間今までの記憶は消え、無邪気な子供として存在する。』


そいつは身体を変え、小さな男の子になった。


『君が成仏してくれないと、僕は新しい命として生まれることができないんだよ。』

「成仏ってことはアレか?天国に行くことか?」

『うん、そうだよ。』

「天国にいっちまったら記憶消えるんだろ?」

『仕方ないじゃないか。』



俺はぐっと唇を噛みしめた。


「一回だけ、下界におりられねぇのか?」

『何言ってるの?』

「このまま成仏なんてできねぇ。」

『じゃぁ、僕はどうなっちゃうの!?死んだ生命が生き返るなんて世界の法則を破るなんてどうかしてる・・!!』

「どうかしていたっていい!!」


俺の声を聞いたそいつは驚いて身を固くした。



「頼む、俺は絶対成仏してやる。お前を生まれさせてやる・・。」