「はぁ・・すっきりした。ありがとう。」
「よかったな。」
暗くなりかけた海。
優はゴソゴソとポケットを探って何かを取り出した。
「赤外線しよ?」
「こうやって逢えたのも何かの縁だよ」と優はもう携帯を操作していた。
見ず知らずの人と赤外線をするのは抵抗があるけど・・・。
優は優しいし。
こんなに見ず知らずの人の失恋話を聞いてくれる人はなかなかいない。
アタシは優と赤外線をした。
電話帳に増える『北川 優』という字。
優は律儀に住所と、誕生日まで書いていた。
「俺の誕生日、祝って。」
そう言った優は誕生日を指差した。
「ぁ・・・。」
今日だった。
優の誕生日は今日だった。


