そう、俺は少し意地悪半分で膝枕をしていたのだ。


「涼香様の日頃の疲れをどのようにしたら取り除くことが出来るだろうかと試行錯誤を繰り返し、ちょうどいい枕としてこの膝を見つけましたので」


試行錯誤なんてしてないけどな。


「い、いいわ、もういいから、起きるわ」


そう言ってあわてて俺の膝から退こうとするすずの額に俺は掌を当てて、にっこり笑って言った。


「遠慮する必要はありません。十分や二十分、一時間も二時間もそう変わりません」

「え……今何時なのよ!?」

「六時を40分ほど回ったところです」


おお、暴れる暴れる。


「離しなさい!」

「遠慮は必要ありませんよ。ははは」

「遠慮なんかじゃないわ!離しなさい!」

「それでは一つだけ頼みを聞いていただけたら、この手を離しましょう」


ニヤリ、俺はすずに笑う。


「モンブランなら渡さないわ」

「いえ、イチゴショートの件です」


すずが首をひねる。

そりゃ、これだけモンブラン好きな男が、イチゴショートを選択するのは確かにおかしいだろう。

俺だって食べるわけじゃない。


「あーん、させてください」


俺はにっこりと笑って言った。