夜はあまり眠れなかった。

そして俺は次の日、朝家を出た。


今更だけど、正直……俺のやってる事って正しいよな……って思う。


そんな事を思いながら、待ち合わせ場所の公園に着く。

すでに藤沢は来ていた。



「藤沢!」

「あ、神崎君。おはよう」

「おはよう」


真っ白のワンピースに、供え用の花を持って立つ藤沢は、制服を着ている時の藤沢より大人に見えた。

一瞬ドキッと、心臓がはねた。


何考えてんだ俺。


「早いんだね。もしかして、待った?」

「ううん。私もさっき来たから」

「そっか。じゃぁ行こうか?」

「……うん」


藤沢は今、どんな気持ちでいるのかな。

俺、藤沢に悪い事してないかな。

ここに、半ば強引に連れてきたそんな俺を藤沢はなんて思うかな。


思う事はたくさんあった。

会話もない。

ただただ黙って、藤沢は俺の後ろから歩く。


そして……。


「藤沢……」

「……うん」


あと一歩歩けば兄貴の墓の前。

藤沢は重いはずの一歩を踏み出す。