あたしの膝の上にある、紙袋には。

 例の上着が、出番を待っていた。

 後は、岸君本人が来て、これをはおり。

 クラスメートを、脅かせば、それで終わり。

 ……の、はずだ。

 べ、べっっつに、ねぇ。

 岸君の彼女になりたいから、って言うわけじゃないけどっ!

 大した理由もなくいじめられるのって、辛いよね。

 結局、キスの現場を見られて、追いかけて来もしなかった直斗より。

 好きだって言ってくれた岸君の方が百倍、いい。



 ……



 ……そう、決めたんだもんっ!

 誰か、何か、文句ある?



 ふんっ!


 なんて。

 一人でじたばたしている時、だった。

 通りに面した公園の隅。

 自転車やバイクが沢山置いてある駐輪場から、ヒトが一人、入って来るのが見えた。



 ……えっと、あれは……



 もしかして……!



 ……岸君、かな?

 普段、見慣れている格好とは全く違って……



 どきどきする。




 だって、まるで、別人なんだもん……!