廃炎の中腹の森。

かつてシルクがクラフィティーと出会ったその場所でフレアは来る敵を待つのだった。

『お前にしちゃあ神妙な面持ちだなぁ。

緊張ってやつか?』

イフリートの言葉にフレアは横目でイフリートを見る。

そして鼻で笑い言う。

「そんなものは百年も昔に捨てちまったさ。

城の外で風に当たるのなんか久々だからよ、ちょっと感傷に浸ってるだけさ」

そよそよと吹く風。

リコの狂気を含んだその風はどこか生暖かく悲しいものであった。

暗い月夜がどんどん黒い雲に覆われていく。

段々と薄気味悪い闇が蝕んでいく。

「むこうは上手くやってんのかね?」

ワイズとシルクのことを想いながらそう呟いた。

イフリートは何も言わなかった。

フレアと似て楽観的に物を言うイフリートであったが厳冬の大陸での闘いはいかにワイズとシルクであっても苦戦は必至。

最悪の場合には両者が破れることも容易に想像できるもので、イフリートは無言を選んだ。

微かな葉の擦れる音にフレアは振り返った。

姿も気配もない。

「いるのは分かってるぜ?」

何もない闇に目掛けてフレアが言う。

返答はない。

「イフリート、ギフト『火炎車輪』!!」

フレアは闇に向かって揺らめく炎を纏った車輪の一つを投げる。

すると何かがそれを回避したかのように蠢いた。

「ったく……よもやとは思っていたが」

フレアはその影の正体に驚く。

それは宴の参加者ではなかった。

「まさかお前があの少女の狂気を狙っていようとはな……」

火炎車輪の4つがフレアの回りを回転する。

その炎が辺りを明るく照らしていく。

蠢く闇は次第に光に照らされていき。

それは姿を現した。

『てめぇ中立の立場じゃなかったのかよ?』

「まさかお前が敵になるとはね……



神の使い」

純白のローブを身に纏い、煌めく翼が雄々しく生える。

煌めく光の輪に長い艶やかな髪。

フレアの前に立っていたのは紛れもなく天使。

「いったい何の用かな?

通達する者……メゼシエル!!」