南方、最大の大陸をもつ厳冬の大陸。

年間の平均気温は10℃に満たず、過去に最低気温マイナス35℃を記録した極寒の地である。


年の四半分は雪に覆われ、食料は他の大陸からのものが八割。食料自給率は2割に満たない。

「しかし、寒いなぁ」

マントに身を包むシルク。

同じようにマントに身を包みながらも身体を震わせるマリア。

その隣で平然としているワイズとリンク。

「ワイズ達は何故平気なんですか?早春の大陸を出てから服を重ねたりしてませんよね?」

ワイズとシルクは互いを名前で呼ぶことを決めていた。

「ていうか何であんたまで平気そうなのよリンク?」

リンクはマリアを見て嫌らしく笑う。

「風だよ」

「風……?」

ワイズは足元に積もる雪を一つまみして、身体の側で手を離した。

すると、雪の粉がワイズとリンクを囲うようにして回り始めたのだった。

「そうか、気流で雪を弾いて、更に熱伝導を遮断しているんですね!」

「ご名答。

更に秘密を言うなら、気流の中は早春の大陸の空気を閉じ込めてあるから、僕達には快適ってわけさ」

「そんな魔力の無駄遣いして……」

マリアが呆れた様に言うと、ワイズが笑う。

「この程度の風を操るのなんて息をするのと一緒だからね」