少し前を並んで歩く背中を見つめる。

丸まった背中を、微妙に左右に揺らしながら歩く、その姿は二人、悲しいくらいによく似ていた。



さよなら。

言おうとしてやめた。

言ったら二度と、会えない気がした。



「元気で…」


差し出された手は、乾いてて、暖かかった。

頷くと、心には冷たい風が吹いた。


あたしの顔を覗き込む瞳は、淋しさに潤んでいた。

きっと、あたしも今、それと悲しいぐらいによく似た顔をしてるだろう。



「おとうさん…」


それ以上は、言葉にならないあたしの肩を、母が優しく抱いた。

並んで歩く二人の背中は、もう見ることはないだろう。



振り返らない背中を、遠くなるまで見送った…