「君江さん、あんた、私達が送った御祝儀を克也に内緒で使い込んでたんだって? それで今更お返しを送ってくるなんて随分ずうずうしいことするじゃないの」


 えっ? 何それ? 私は御祝儀を使い込んでなんかいないし、克也の実家から送られてきて、受け取ったのは克也だ。

 君江はパニックになりかけていると、克也の母親、すなわち姑が困った表情をして、親戚一同を見回しながら云った。


「そうよねぇ。君江さんたら浮気でもしているんじゃないかしら? 私も随分とお金を貸してあげたけれど、まだ返して貰ってないのよ」


 何云ってるの? それは逆でしょ? あなたが生活費に困ったと云って、舅にも克也にも内緒でお金を貸してって泣きついてきたのは誰? その度にやりくりして、あなたにいくら貸したと思っているの。まだ一円たりとも返してこないくせに。

 君江は顔を真っ赤にし、小刻みに震えていた。必死に怒りを抑えていたのだろう。
 すると間髪入れずに他の親戚も、君江を見下しながら大きな声で云った。


「君江さん、あなたがお姑さんからお金をせびるから、生活が苦しくなって親戚一同に彼女は泣きついてきたのよ。だから私達は生活費を負担してきたの。あなたのせいなのよ」


 その一言で全てが分かった君江は、無言で携帯電話をいじり始めた。


「ちょっと、聞いてるの君江さん? 人が話しているのに携帯なんかいじって失礼じゃない」


 親戚の怒鳴り声を聞きながら、君江は無言で携帯電話を皆に突き出した。