「夏生、私と離婚して。もう限界……」


 耐え切れなくなった私は、夫にそう告げた。


「もう、関わらないから。離婚はしたくない」


 夫が一言だけ私にそう云うと、舅に電話をしたようだった。嫌がらせを受け、離婚させられそうだと。
 すると、何も知らなかった舅は激怒し、その後、姑と小姑を怒鳴りつけたらしい。
 
 私が云いつけたと、逆恨みした姑と小姑は、すぐに私に電話をかけてきたが、夫が出てくれた。

 夫は私のために、文句を云ってくれるのかと思ったが、文句どころか優しく話しを聞いてあげている様子だった。一時間近くも……。

 それを見た私が、愕然としたのは云うまでもない。

 嫌がらせを受けていることを知っていながら、見て見ぬ振りをして、文句の一つも云ってくれないなんて、悲しかった。もし私が逆の立場なら、とっくに激怒し、愛する夫を守ろうと努力するのに。

 電話を切った後、私はやり場のない気持ちを夫にぶつけた。


「私のこと愛してるなら、どうして助けてくれなかったの? どうして文句の一つも云わず、お義母さん達の話しを、優しく一時間も聞いてあげるの? そんなに私より信じてるの?」 


「何だよ、もう関わらなければいいんだろ。親父に電話してやったんだから、もういいだろ。いちいちうるせぇな」


 そう云って、夫は私を思いっきり蹴ると、外に出ていった。
 涙が止まらなかった……。
 悔しくて、愛されたくて、死ぬことも出来ない……。惨めだった。