家を間違えた訳でもないと分かると、犬助は益々、驚いて何を言っていいのか見失ってしまった。

人は良さそうだが、中身が同じとは限るまい。

「え、あの、桃子と言うのは……」

 取り次ぐべきか否か迷う内心のまま、どっちつかずの台詞が出る。

「鬼退治の任を承けたと言う、桃子殿のことですが。はて、心当たりはありませんでしょうか」

 間違いなく、うちの桃子である。

犬助は、たいそう狼狽えた。

前回も取り次いだばかりに、鬼退治なんて恐ろしい事態になってしまったのを思うと、踏ん切りがつかない。

この人には悪いが、知らぬ振りで追い返してしまおうか。

「桃子は私だが、お前は誰だ」