鬼と桃

「そんなっ、頭を上げて下さい! 桃は、そんなに大した者じゃあ……」

 他人の器をお前が語るな、とばかりに桃に睨まれて、犬助は口を押さえる。

言ってから口を塞いでも、何の意味もない。

「へぇ、手だれの供というのは、お前のことか」

 今度、相手を検分するのは桃子の方だった。

自分が雉ノ進を不躾だと言ったことも忘れて、桃は男をねめまわす。

体が特別に大きい訳ではない。筋肉が殊更に発達している訳でもないようだ。

「……手だれ、ですか」

 眉を下げて、困ったように笑う顔は、武人のそれとは言い難かった。