空を飛ぶ魚

「逆に、誰かと歩調をあわせるっていうのが、億劫になることもあるんだ」


「ふーん?」


「皆が同じ方向向いて同じ道具を使って同じ音を出して同じ行動をすることが、気持ち悪くなることがあるんだ」


「うん」


「別に酸素が足りてないわけじゃないんだけど、息が苦しくなる、時々」


「うん……」


「なんかそのまま溺れてしまうんじゃないかって、でも溺れたら死んじゃうわけで、俺は死にたいわけじゃないから、溺れるわけにはいかないんだ」


「……」


話が哲学チックになってきているような。

でも、聞いていてつまらなくはない。

私はなんだか特別な講義を聴いているような気分になって、黙って彼の話を聞き続ける。


「じゃあ溺れないようにする為にどうしたらいいかって聞かれたら、そこから顔を出せばいいのかもしれないけど、それじゃとても足りなくて、じゃあどうすれば呼吸できるかって言われたら、飛ぶしかないと思うんだ。
だから、溺れない為に飛んでみたりするんだ、多分、俺は。でも果たして、上手く飛べているのかなぁ」


「……そっか」