空を飛ぶ魚

「……あー」

と、忘れかけた頃になって、彼はようやく口を開いた。

思うに、彼の時間の進み方はどこか狂っているのではなかろうか。


「んー、と、さ」


「うん?」


「別にね、誰かと一緒じゃなくても、平気なんだ、俺は」


「うん」


「ていうか、特にどうでもいいんだ」


「うん」


「誰かと同じ、ってのは、それは楽、だろうけど、別に楽じゃなくても大丈夫だし」


「うん」


「別に死ぬわけじゃないし」


「まぁね」


死んだら困るしね。

彼は言葉を続ける。