俺はしばらく途方に暮れ、何も考えずにそこに座っていた。


だがそこにいても美幸のことを思い出すだけだと思い、喫茶店から出て行った。


そしていつもより重い足取りで駅から出ていく。

駅から出ると、地獄が始まる。
熱い太陽が、街を暑くするのだ。


俺はふと駅の前を見ると、そこには光輝さんが働いている美容院が建っていた。



『…ここだったよな…』



黄色と白の塗装の建物。ガラス張りになっていて中の様子がよく見える。


光輝さんに久しぶりに会いたいと思い、中を覗いた。


受付の近くで光輝さんを発見した。


光輝さんを見るのはあの時以来で、きっと覚えていてくれないだろうな、と諦めたりもしたが、勇気を出して俺は美容院の中に入って行った。



美容院に入るとシャンプーの匂いが全体を埋め尽くしていた。