幸い、周りのお嬢様方が騒がしかったおかげで会話の内容は、あたし達3人しかわかってない。


「上等。今回は譲ってやるよ」

「今後も、譲らないがな?」


しばらくにらみ合いが続くと、急にフッと2人が少し笑った。

いや、意味わかりません。

真っ赤な顔から一転。

この状況を理解できてないから、首を横に傾げる。


たぶん……陸と会長……和解みたいなモノをしたのかな?


「さて、帰るぞ」

ようやく、地面に降ろしてもらった。

けど、帰るって……?

「どこに?」

「俺ん家」

「え、行かないよ!」

即答で返す。

だって、今日は被害者達の病院に行くんだもん。

陸と帰る気はない。

繭ちゃんが、彼女たちに謝るって言ったから。


理由を伝えると、途端に機嫌が悪くなるのがわかった。


「じゃあ、必ず俺ん家に来い」

「行かないよ、繭ちゃんと遊ぶの」


ピキッとお怒りのマークが額に現れる。


そんなコトしたって、今日は行かないよ。

ここ数日、遊んであげられなかったから、昨日遊ぼうって約束したんだもん。


「……会長の次は繭かよ」

ボソッとため息とともに呟かれた言葉。

自分より、繭ちゃんを選んだことが悔しいみたい。