繭ちゃんを抱っこしていたのに、彼女は危険を感知したのか、ピョンとあたしの腕から飛び降りる。


「おにいちゃん?」

大きな瞳が、上を見上げた。

あたしの後ろにいる人物に。


胸の下に腕をまわして、あたしを持ち上げてる。

甘い香水の香りが鼻をかすめた。


「軽っ。まだ体重戻ってねぇな」


耳元で囁くように言われる。



東雲学園の正門。

生徒会がいるおかげで、たくさんの野次馬がいる。

みんな、差はあるけど、「お金持ち」には違いない。

当然、あたしを持ち上げてる彼のことも知ってる。

なんてったって。

日本一有名な大企業・滝本財閥の御曹司ですから。


「あれって、滝本様!?」

「ご子息に間違いない!」

「キャア~陸様だわ~」


学園のお嬢様達は大騒ぎ。

目がハートだ。

生徒会がいるだけでも、うるさかったのに。

もっと、騒がしくなってしまった。