また頭痛が始まる。

片手で額を押さえた。


「みんな…死んじゃうよ?」


ニヤニヤ笑う男が、刃物を振り上げる。


そのまま振り下ろしたら───…確実に、零ちゃんがケガしちゃうよ。

だからといって…人間に術は使えない。

繭ちゃんが操ってるけど、彼は人間だ。




「……賭けるか」

生きるか、このままあっちの世界に連れて行かれるか…。




「……まずは、朝比奈零。杏樹ちゃんの友達からね」


シュッ………!

刃物が振り下ろされる。


「いやあああああああ──!」

生徒達の悲鳴が上がった。

「零……っ…」

西国君の悲痛な叫びが悲鳴の中にあった。







ザクッ─────…


ザクッ───…




その場を見ていた人間の視界を、赤と黒が支配した。


赤は──…少女の体中から流れた血。

黒は──…

漆黒の潤った長い……髪。