運動神経は、お父さんに似て結構良いから…難無く3階から着地。


「よ、吉川さん!?」

先生達の驚く声が背後でする。


あたしの目線の先にいるのは、零ちゃんと男だけ。


男は、刃物を零ちゃんの鼻先に突き付けていた。

慎重にやらないと…零ちゃんが危ない。



すると。


突然……男があたしを見た。


「………み〜つけた……」

ニヤリッと気持ち悪い笑い方。

全身に鳥肌が立つ。



「……探したよ……杏樹ちゃん」


なんで…あたしの名前を知ってるんだろう?

東雲で、本名を知ってるのは…ごくわずかなのに。

まず…あたしが東雲にいることを知ってる人も少ない。


「早く逝こうよ。待ってるんだ……化け物同士、仲良くしよう?」


目の前にいるのは、大人の男。

なのに、声は“繭ちゃん”だ。